朔の里
意識を失った高耶を、直江が布で清めてやっていると、高耶が目を覚ました。
直江は、高耶に語りかける。
「私がこうやって過ごしたいと思っているのは、高耶さんだけですよ。それに、今更都で暮らしたいと思いません。私はこうして高耶さんとこの屋敷で暮らせれば、それで充分です。母もそのことは解っているはずです」
なんせ、他人などどうでもよい俺が、わざわざ一緒に行動していたんだからな……。
離れて暮らしても、親子であることに変わりない。高耶と過ごす直江をみて、直江の心情など把握しているだろう。
「ほんとう? オレだけ?」
今回のことがあって、直江も高耶への独占欲を自覚した。それが、自分のものへの単なる独占欲、ということでなく、必要な存在だ、と。
でなければ、今まで執着心が薄かった直江が、都で一人行動した高耶が攫われる心配などしなかっただろう。そのまま捨て置いた筈だ。
「ええ。こんなに私を虜にする存在が側に居るのに、他に目がいくはずがないでしょう?」
直江はそう言って、高耶の上に覆い被さる。
「これでも信じられない?」
直江は先程吐き出してもとの大きさに戻ったはずのものを、高耶の太股へ押しつける。
それに高耶の体が、ピクリと反応する。
この存在だけは手放せない、と直江は実感する。
その理由は、高耶の瞳の魅力に囚われたからではない。人肌に餓えていたわけでもない。ただ、高耶が高耶だったから、というだけだ。
気付いたら高耶の存在が、今まで抱えていた空虚の中に、隙間なく嵌り込んでいた。まるで、生まれる前からそう定められていたかのように。それが、天命であるかのように。
――いや、きっとこれは天命。
「もう一回」
直江は全てを受け入れ高耶の耳元で囁く。
「いい?」
掠れた低音の響きに、高耶の体も疼き出す。
二人は再び褥へと沈み、夢と現の狭間を彷徨い始める。
――終
Back Novel Home