☆CAKE☆
「仰木さん!…どこ行くがですか?」
「卯太郎…」
高耶は卯太郎に出会ったことに、あちゃ〜という表情を一瞬浮かべ、卯太郎にばれないうちにすぐに消す。
「ちょっと、な…」
「買い物ですか?なら、ワシがいきますきに!」
高耶が財布を持っていることに気づき、卯太郎が申し出る。
「いや…、自分で行くから気にするな」
卯太郎の純粋な好意は嬉しいのだが、今回ばかりは人に頼むわけにはいかない。
「そうですか?」
尊敬する高耶の役に立ちたい卯太郎は、申し出を断られて残念そうに言った。
その様子に卯太郎には弱い高耶は、卯太郎に頼む用事を考える。
「卯太郎、今度の作戦の資料、集めてくれないか?」
「ハイ!!すぐそろえますきに!」
卯太郎は高耶に用事を頼まれたことで張り切り、さっそく廊下を資料室に向かって走っていった。
その様子に、高耶から微笑がこぼれた。


「さて、と…」
なぜか、隊士たちやたらと声をかけてくるんだよな…と思いつつ、高耶は他の隊士に見とがめられないうちに、そそくさとアジトを後にする。


高耶は、自分が赤鯨衆の隊士たちにアイドル扱いされていることにいまいち自覚がない。おかげで、直江はいつもヒヤヒヤしているのだが…(笑)
その直江も、常に高耶の側にいるわけではない。今は高耶のいるアジトとは別のアジトに詰めている。その直江のいない隙をついての買い物だ。
直江のバースディケーキを作るための買い物に他の隊士を付き合わせるのも、直江に知られるのも気恥ずかしい。
だいたい、今朝の夢が悪いんだよな----


直江のバースディケーキを作ろうなどと思ったのは、朝見た夢のせいだ。
昔、家の中が荒れ、 母親の佐和子が出ていった後、美弥のために本をみながらバースディケーキ作っていた。
母佐和子がい たときには他の家庭のように誕生日を毎年ケーキを焼いて祝ってくれていた。母親が家を出ていった後、 荒れた家の中にあって美弥には少しでも母のいない隙間を埋めてやりたかった。だから、慣れない道具を 使い一生懸命作っていた。年を重ねるごとに上手く作れるようになり今ではレシピを見ることなしに作るこ とができる。
そして今朝なぜか当時の思い出を夢にみた。美弥に、もう何年も作ってやっていないな----と思 い、そういえば明日は直江の誕生日だったことを思い出した。
それどころではない日々で、まったく思い出し もしなかった直江の誕生日だったが、前日でも思い出したからには何かしてやるべきだろう、と思い、せっかく だからケーキでも作ってやろう、という気になったのだ。


卵と小麦粉…生クリームといちごと……いちご高いんだろうな〜
まっ、他によさそうなのがあればそれでいいか!


「あっ、今空海様!?」
買う材料を考えながら歩いていると、ご近所のおばさまから声がかかった。
「今日はね、○○スーパーで砂糖が安いわよ!!」
なぜかいつもこうして、高耶の分身に声をかけてくれるおばさま方は多い。
「ありがとう……」
急いでいるのか今日の高耶が生身の高耶だとは気が付かずにおばさまは去っていった。
「砂糖、か……」
こうして日々赤鯨衆の食費は切りつめられている。
ただでさえ男が多い集団だ。その上、皆動くからかよく食べる。自給自足などは到底不可能な世の中において食料調達は重要な課題だ。
それを補っているのが、こうしたおばさま方の情報だ。
そして、四国のおばさま方にとっては一日一回会えたら目の保養になってラッキーな、今空海様の役に立てるなら……という訳だ。
赤鯨衆だけでなくおばさま方のアイドルにもなっている高耶であった。


一度、食費がかかりすぎて困っていると一人のおばちゃんにこぼしてからだよな……こうして声をかけられるようになったのは。と思いながら近所のスーパーに向かう。


スパーで必要な材料を買い物かごに入れていく。やはり生ものは高いな……と思いながら、いちごを手に取る。
まっ、しょうがないか。
いちごもかごに入れる。


忘れ物はないよな……
レジに向かい会計を済ませアジトへ戻る。


自室に向かわずに直接調理場に向かう。
そこには、夕食の仕込みをしている調理班の姿があった。
「仰木隊長!!」
高耶の出現に皆色めき立つ。
高耶は時々夜食を作るため調理場を借りに来ているので、調理班の隊士とは顔見知りだ。
「少し借りられるか?」
「もちろんですき!」
「サンキュ」
調理場の一画に買ってきた材料を広げ道具をかき集める。
隊士たちは高耶が何をはじめるのか興味津々だ。
「隊長は何作るがか!?」
調理班というからには料理好きが集まっている。だが、戦国時代の霊である隊士には材料をみただけでは何ができるのか皆目見当が付かない。
「ありゃ、ケーキだな。でも、ケーキなんか何で作るんだ?」
中に現代霊もいる。材料をみれば何を作るのか見当が付いても、作る理由が思いつかない。
「けーき!?なんじゃソレ」
「ああ……」
古い霊にはケーキの存在がわからないことに思い至り説明する。
「甘い洋菓子の一種だよ。でも、何でまた……」
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