☆CAKE☆
隊士たちの会話が耳に入ってくる高耶は落ち着かない。
隊士たちの気を自分から逸らす方法は……と思案していると先ほどのおばちゃんの情報を思い出した。
「お前たち、そーいえば○○スーパーで砂糖が安いらしいぞ!」
「本当ですき!?」
ちょうど砂糖が残り少なくなっていたところだ。リーダー格の隊士が数人の隊士を引き連れて外に出ていった。
残った隊士たちも自分の仕事を思い出し、時々高耶に気を取られながらも持ち場に戻り作業を再開した。
高耶もケーキ作りに専念する。なれた手つきの高耶は手早く材料を混ぜていく。混ぜ合わせた材料を型に流し込み、オーブンに入れる。
「よし!」
大きなケーキを作る気のない高耶は、12センチのホール型を用意していた。もう一つ、大きめの調理場にあったホール型にも材料を流し込み、他のオーブンに入れる。こちらは調理場を貸してくれた隊士たちの分だ。
次に生クリームの用意を始める。泡立て器でかき混ぜる。電気をあまり使うわけにはいかないので、ここは自力で泡立てる。途中腕が疲れ何回か休みながら作業をしていると、見かねた隊士の数人が替わりましょうかと申し出てくれたが、こればかりは他の人間に替わってもらうわけにはいかずに、断りながら作業を続ける。
「ふぅ〜」
何とか泡立て終わる頃には、ケーキの好い匂いが漂い出す。
その匂いを嗅いだ調理場にいた隊士たちがオーブンの周りに集まり出す。
「これがケーキがか?」
「甘くて好い匂いじゃな〜」
その様子に高耶もオーブンの様子を見に近寄る。
「ふくらんでるな……」
満足げに中の様子を見る高耶に隊士が声をかける。
「仰木隊長、好い匂いですね」
「ああ……」
ピーピー
「そろそろだな……」
高耶はオーブンから小さい方のケーキを取り出す。
「美味そうじゃ」
ケーキというものをよく知らない隊士たちは興味津々だ。
火の通り具合を確かめ、冷ますためケーキを型から取り出す。
「これからどうするんですき?」
「ケーキを冷ましてそれからさっきの生クリームで飾り付けるんだ」
「このままじゃ食べられんのですき?」
「ああ、美味そうな匂いじゃが」
「食べられるが、これはちょっとな……」
苦笑しながらごまかす高耶に現代霊は何かあるな……と感じるが、他の隊士の手前声には出さない。言ったが最後、大変な騒ぎになるのは目に見えている。
ピーピー
「っと、向こうもそろそろかな……?」
そそくさと、逃げるようにもう一つ大きい方のケーキを見に行く。こちらも程良く焼けているようだ。
ケーキをオーブンから取り出し、型から抜く。
「こっちも焼けているな」
竹串をケーキに通して焼け具合を確認する。
「これは調理班の皆で食べてくれ」
高耶が今焼き上がったケーキを示しながら言うと、歓声が上がる。
「本当ですか!?」
「ああ、日頃調理場を使わせてもらっている礼だ」
声をひそめてもう一言。
「ただし、他の奴らには内緒だぞ?」
「もちろんです!!」
このことが他の隊士に漏れたが最後、抜け駆けに対する避難の嵐なのは明白だ。隊士たちは秘密を守ることを目で確認しあった。
そうこうしているうちに、砂糖を買い出しに行っていたメンバーも帰ってきた。
「好い匂いですね」
皆口々に言う。
リーダー格の者に改めて、班の皆で食べてくれと伝える。
「それと、悪いんだがこれ夜まで冷蔵庫の中に入れさせてもらえないか?」
生クリームの入ったボウルを指して言う。
さすがに生クリームを自室に置いておくわけにはいかない。
その頼みに隊士たちは一つ返事で了解した。
そのことを確認すると高耶は直江のバースディケーキをケースに入れて持ち自室に戻る。
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