朔の里




 先程放置してしまった獲物は式が処理しているのだろう。既になく、奥村を迎え入れる。
「こっちだ」
 高耶が居る対の屋とは反対に案内しながら、奥村の来訪の理由を考える。直江にとってあまりいいことでないと感が告げている。
「相変わらず一人なのか?」
 相対し腰を下ろした二人の沈黙を破ったのは奥村だった。
「まぁ…な」
 直江はそれに曖昧に応えつつ、用件を催促する。
「無理を承知で頼む!」
 いきなりガバリと頭を下げた奥村に、直江は面食らう。
「お前の力を貸してくれ」
 直江はその言葉に、今まで奥村の表情が硬かった理由を理解する。共に育ったこの乳兄弟は、直江がいかに自分の力を厭っているかを知っている。けれど、解決する力があり友人が困っているのを見捨てるほど、直江も非情ではない。
「どうしたんだ――? 『力を貸してくれ』だけじゃ判らない。詳しく話してくれ」
 直江の促しに、奥村も訥々と話し始める。
「……俺の伯父上を知っているだろう?」
「ああ。朝廷に仕官している狭間殿だったな?」
「そう、その伯父上が先日絵を受け取ったんだ。けれど、それ以来、呪いのように不幸が付きまとっっているらしい」

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