「どういうつもりだ?遠近」
食事も終わりにさしかかった頃、睡眠薬でも盛られたのか突如強力な睡魔に襲われ、気が付いたら後ろ手に縄をかけられ身動きとれない状態になっていた。
意識が戻り自分の状況を認識し、周囲を見回すと遠近が小太郎を引き連れて、近づいてきていた。
小太郎の存在に、自分が易々と薬で眠らされた事実を納得する。
本来薬には毒薬から睡眠薬の類まである程度の耐性を持っている。その自分が遠近の小細工で不覚をとるわけがないが、小太郎が噛んでいるなら話は別だ。小太郎ならば薬に関する知識も膨大に持っている上、自分の薬の耐性についても事細かに知っている。知りすぎている、といっても過言ではない小太郎が協力しているのならば、遠近にとって千人力とも言える。
「お目覚めですか?景虎様」
卑しい笑みを浮かべながら遠近は高耶の側近くに膝を着く。
高耶は頑丈な牢獄ともいえる場所で鉄格子に囲まれ、身を横たえていた。その檻を開け、遠近は中に入ってきていた。
「何のまねだ?」
格好など関係なく、人を威圧させる声音で静かに言う。
威圧感を感じた遠近は一瞬体を引き、威圧された自分を奮い立たせるように景虎に顔を近づける。
「いつまで余裕でいられますかな?…これ、が何かわかりますか?景虎様」
薄笑いを浮かべながら景虎の目の前に小瓶をかざしてみせる。
「…」
透明の瓶に入った青白色の液体。全く見覚えのない液体で、何かわかるはずもない。
「催淫剤…といえばわかりますか?」
下卑た笑みを浮かべ遠近は言う。
「しかも、常習性の。簡単にいったら麻薬のようなものですよ…一度味わえばコレなしでは生活できなくなる」
「何をっ…!?」
遠近の目的は見えずとも、差し迫った身の危険はわかるため、遠近から少しでも距離を置こうと身じろぎする。
「小太郎」
その様子を楽しそうに見詰めながら遠近は瓶を小太郎に渡し、それを受け取った小太郎は、注射器に液を器用に満たす。
遠近は小太郎が液を満たしたのを確認すると注射器を受け取り、景虎の服を所持しているナイフで軽々と切り裂き、腕を剥き出しにする。そして腕を掴み固定し針をだんだんと近づける。
「やめっ…!!」
高耶は何とか逃れようと足掻くが、縛られているため抵抗らしい抵抗ができない。
ついに針が肌に当たる。肌に針が突き刺さる感触。
「やめっ…」
遠近が液を押し出そうとピストンを押そうとした瞬間、高耶は絶叫した。
「…ろぉ〜〜っっ!!」
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